<ネットニュースの弱点>「既存メディアの追従」と「見出し以上の中身がない」

社会・メディア

高橋維新[弁護士/コラムニスト]
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新聞・テレビに続いて登場し、今や押しも押されもせぬ存在にまで成長したインターネット。筆者は、テレビが好きであり、絶滅してほしくはないと思っているが、状況は日々、テレビにとっては芳しくない。
しかしながら、今のインターネットの台頭が悪いことだとも思わない。インターネットがそれだけ存在感を増せば、テレビをはじめとする既存メディアも危機感を覚え、自浄作用を働かせてくれるのではないかと思っているからである。
とはいうものの、現状テレビにもそこまで危機感があるようには思えない。それは何といっても、インターネットがテレビに匹敵するような存在にまでは成長していないからである。それは、インターネットの側にも問題があると思う。
今回は、特に「報道・ニュース」という分野に限って、インターネットが抱えている問題点を指摘したいと思う。要は、筆者がインターネットニュースに苦言を呈するということである。
<1>既存メディアが取り扱った題材を後追いするだけの内容が多すぎる
例えばインターネットニュースの見出しで「AがBに苦言」というようなものがあったとする。AもBも、有名人の名前だと思ってくれればいい。
この見出しをクリックして中身を見ると、Aがテレビ番組や自分が持っている雑誌連載でBに否定的な発言をしたとかいう場合がかなりある。それは、既存メディアで既にやったことを後追いしているだけなので、二次的に報じる意味が薄い。前提となる既存メディアがないとこのインターネットニュースは作れないので、既存メディアが大きな顔をしてしまうのである。
既存メディアではなく、Aが個人のブログでBに言及したことがインターネットニュースになっている場合もある。その場合でも、そのブログの発言が既存メディア(テレビのワイドショー番組など)で紹介されたから後追いしたという場合もかなりある印象である。
結局、既存メディアがやっていることにおんぶにだっこの状態なのである。インターネットでももっと独自の取材をして、A本人に接触してその発言をとりにいくといったような足で稼ぐ努力が必要だろう。
【参考】炎上ブーム時代のテレビ作り『だからデザイナーは炎上する』
<2>内容に見出し以上の中身がない
例えば「CがDと焼肉デート」というようなインターネットニュースがあったとする。でも、期待して中身を見ると、本当にそれ以上のことが書いていないという場合がよくある。
中身を無理に引き延ばすために、まずCとDがどのような人物かを書くところから記事を始めるというのもよくある手法だ。もちろん、週刊誌の芸能記事にも、この問題はよく見られた。芸能人関係のすっぱ抜きなどは、中吊り広告の見出し以上の中身がない。本誌の記事を読んでもそれ以上の情報は得られないことがほとんどだったので、電車内で中吊りを読むだけで情報を得ている人も多いはずだ。
もっとひどいものになると、見出しをセンセーショナルにするために実際にあった事実をゆがめている場合がある。先に挙げた「AがBに苦言」という例だと、バラエティ寄りのテレビ番組でAが冗談めかしてBにツッコミを入れただけなのに、こういう見出しになっている場合がある。
【参考】キンコン西野<無駄に炎上する人たち>キーワードだけに反応して炎上する「単語脳」
そのような冗談などは、いちいち抽出して取り上げるニュースバリューまではないだろう。AがBと本当に仲が悪いかのような印象を与えて、衆目を集めたいだけである。中身がないのに見出しだけにインパクトを与えてクリックさせるこの手法は、インターネット上では「釣り」と呼ばれる。そこにはPV数を稼ぎたいだけという浅ましい魂胆が、分かり易く見てとれる。
筆者が今のところインターネットニュースに感じている問題点は上記の2点である。無論、全てのインターネットメディアにこのような問題点があるとは限らないが、今のところかなりの場合にいずれかの問題点が当てはまっている印象である。
既存のメディアを打ち倒す気概をもって、自覚的に改善していって欲しいと思っている。インターネットがこの体たらくでは、既存メディアもいつまでもふんぞり返ったままになってしまう。
 
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