<出演者の指摘で発覚>TBS「ピラミッド・ダービー」CG処理までするヤラセ番組

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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また、テレビ番組による「捏造」が発覚した。今回は出演者からの指摘による発覚だ。日本のテレビはいつまで同じ過ちを繰り返すのだろう。スポニチアネックス(2016年6月27日 6時22分)によれば、

TBS「ピラミッド・ダービー」の捏造疑惑 関係者語る「独断で編集」
TBS「事実確認中」番組一部捏造?クイズ全問参加もCG処理で消す

として、次のように報じている。

 「TBSのバラエティー番組『ピラミッド・ダービー』(日曜後7:56)で、一部の演出で捏造した部分があったことが分かった。さまざまなジャンルの専門家同士が対決し、パネリストが勝敗を予想するクイズ番組。問題があったのは6月19日放送の『双子を見極める対決』。放送では4人の専門家が登場し、勝ち抜け方式で4問を解答、顔相鑑定士の池袋絵意知氏は3問目を間違えたために脱落。4問目の際は池袋氏の解答台は無人だった。残る3人で争い、メンタリストのDaiGo(29)が優勝した。この内容に関し池袋氏が22日のブログで、実際の収録時と内容が違うことを指摘。収録では、参加者全員が4問を解答。最後に順位付けする方式で撮影し、脱落ルールはなかったという。(中略)4問目の放送時に無人だった解答台には、収録時は池袋氏がいたが、CG処理で消されていた。(中略)関係者は『面白い内容になるように制作会社のディレクターが独断で編集した。収録時にはなかった脱落ルールを作るなど一部で捏造した。局側が主導したわけでもなく、出演者も一切関係ない』と話した。番組プロデューサーは26日、池袋氏に謝罪した。」(以上、引用)

これは、いくら言葉を取り繕おうと「過剰演出」などの範囲を明らかに超えている。はっきりと「捏造」である。この「捏造」編集で、番組が「面白い内容になるようした」と制作者が主張するのであれば、演出方法に相当な自信を持っているのであろうから、最初から、ドラマなどのフィクションで作れば良いだけの話だ。
ドラマなどのフィクションで作っては面白くないとわかっているかこそ、事実の力を借り、事実を編集によって「加工」し、「捏造」したのだろう。事実に対しておこがましいことこの上ない。このような番組作りは、誠実さも謙虚さのかけらもない。
【参考】<TBSが水戸黄門印籠でヤラセか>テレビから「嘘」をなくすためには「停波」も必要?
なぜ、テレビの「捏造」はなくならないのか。そしてなぜそれは繰り替えされるのか。
これをなくすためには、最も嫌な方法だが罰則を業界団体で定めるしかないように思う。スポーツの世界には出場停止が、食中毒を出した業者には営業停止が、法を犯した政治家には公民権の停止がある。あらゆる業界で間違いを犯した場合に厳しい罰則が設けられている。しかし、テレビだけがそのくびきから逃れることができるのは不公平だ。
例えば、捏造やヤラセが認定された場合に次のような罰則が定められていれば、それなりに効果があるのではないか。

  • テレビ局は1週間の放送禁止
  • テレビ局のトップ(および周辺の幹部も一緒に)を無条件更迭
  • 当該番組のディレクター、プロデューサーは1年間(以上)のテレビ業務の禁止
  • 放送局の電波停止も厭わない高市早苗総務大臣を民間放送連盟会長にする

上記のような罰則を定め、それを効果的に機能させるためには、どうしても「内部告発の奨励」が必要だ。場合によっては、第三者機関は賞金や報償を出す必要もあるだろう。
そのためには、以下のようなルールも定めなければならない。

  • 内部告発を行った者を保護し、その制裁の禁止
  • 命じられて作業を手伝ったAD(や末端従業員)を保護し、他社への就労支援
  • 世間の感情と乖離した結果を出すBPOに、裁判員(のような第三者判定)制度を導入

過激なことを書いているようだが、今のテレビ業界は、これぐらいの厳罰化をしなければならない状態になっているのではないか。安易に捏造に手を染める質の悪い人間が、テレビ番組の制作現場に存在しているという現実。この現実を根本から変えない限り、残念ながら我が国のテレビに未来はない。
 
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