<障害者雇用水増し事件>不祥事をしながら「省庁横断の試験実施で」と論理すり替えに怒り

政治経済

山口道宏[ジャーナリスト、星槎大学教授、日本ペンクラブ会員]

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それは、違うだろ!! と誰もが思うのだ。
「障害者雇用水増し 統一試験実施へ 中央省庁 年度内の是正見直す」(2018.9.21産経)のだとという。「試験」の前にすべきは、今回判明した水増し事件の「詫び」と「処分」だ。にもかかわらず「試験実施」など筋違いで、それは障害者への「脅し」か「開き直り」としか見えない。

「締め付けをしようというのか。もっと門戸が狭くなる」とは障害者の言だ。「本当は、障害者なんて使いたくない」が見え隠れする役人の高飛車な対応に怒り心頭である。

近年、不幸にも我が国の国民は「公僕」に依るウソと隠ぺい体質になれてしまったのか、「偽装国家」のてっぺんが「モリカケ事件」の被疑者ゆえか、官僚も悪事に手を染めても全く悪びれることがない。「お前は馬鹿か。正直に法律通りやる役所なんて、ないの!」と、上司が部下を叱責する声が聞こえるようだ。昔からいましたよね、「いけ、いけ」と煽っておいて、裏切る奴。戦時中の「関東軍」は数多くの日本人同胞を見捨て殺した事実が甦るのだ。

障害者を雇っていないのに「国のルールに従い障害者を雇用している」と国も自治体も、堂々の虚偽報告だから呆れる。なんと死亡職員もカウントしていたとも伝えられる。「障害者雇用促進法」(平成25年「改正障害者雇用推進法」)の実施状況調べで、国の33行政機関中27機関で計3460人の「水増し」があったことが明らかになった。

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同法は、民間で従業員100人超の障害者雇用に2.2%達成(国は2.5%)を義務付け、「未達」の場合は不足1人当たり5万円の「納付金」(罰金)の支払いを求めた。しかし今回の不祥事で「役人がそうなら雇用なんてしないで5万円払った方がいい」(ある民間労務担当役員)といった声も漏れ聞こえる。

というのも、そのささやかな罰金も「民間」のみで公的機関は対象外というから最初から「ザル法」だ。まさか、そんな違法行為はないと誰もが想定外だったに違いない。しかし、こともあろうに法令遵守の「先導役」が法律違反だ。公務員の違法行為禁止(憲法17条)が待っている。「ガバナンス」などどこふく風か。省庁の不祥事の責任は「内閣」にあるのだ。法律は「必要があると認めたときは厚生労働大臣から事業主に対し助言または勧告を実施」というのだから。

民間からも「役所がごまかしなんてとんでもない。不公平だ(?)」と怒りの声が上がっている。この違法行為は、民間なら少なくとも①1人5万円(月)×12か月×3460人+②予定年収(200~250万円厚労省発表)×3460人×〇年という「賠償額」がはじける計算だ。

とき、あたかも、2年後のオリンピック・パラリンピックだ。国はパラリンピックの選手へは「理解」があるが一般の障害者には冷たい。今回のもうひとつの罪深さは、障害者を2分したことだ。差別に故意も過失もない。今回の行政庁の裏切り行為は行政による不作為の罪だ。同法は障害者への「合理的配慮」と謳うだけに、その責任は重い。

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