<最先端のロボット手術の問題点>手術ができない医師が増える危機、科学と技術の持つ矛盾


松井宏夫[医療ジャーナリスト]

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医療機器『ダ・ヴィンチ』を使ったロボット手術をご存知だろうか?

2012年4月に前立腺がんで保険適用となって以降、日本にはすでに160台以上が購入され、手術に使われている。身体にほとんど傷をつけない、身体にやさしい手術として評価されている。これと同程度のキズで治療ができる手術として、その前から腹腔鏡手術、胸腔鏡手術が行われている。

患者はできることなら手術はしたくないのが本音だろう。それでも手術が避けられないならば、身体に負担の少ない手術と考える。これらの手術はその患者の気持ちに答えている。

だが、万が一のことを医療提供者たちは考えているのだろうか?――

それは開腹なり、開胸なりの「手術ができない医師ばかり」になった社会のことである。今は開腹・開胸手術の出来る医師がロボット手術なりを行っている。が、将来はその基本的手術を飛ばしてロボット手術に入ってしまうことになるのでは……。そんな懸念がある。

その時にロボット手術で大出血が起きると外科対応ができなくなってしまう。「開腹・開胸手術が基本」という医師も今は多いが、実際その手術が行われなくなる時代はすぐそこに来ている。その時にどうするのか――その正式な答えは聞いたことがない。(松井宏夫[医療ジャーナリスト])

 

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松井宏夫(まつい・ひろお) 医学ジャーナリスト 1951年 富山県生まれ。中央大学卒。日本ドキュメントフィルム助監督、『週刊サンケイ』を経てフリーに。最先端医療やがん医療を精力的に取材。名医本のパイオニア。日本医学ジャーナリスト協会幹事、東邦大学医学部客員教授。最新刊に『がんと闘う!名医と最新治療』(主婦と生活社)。著書多数。