M-1決勝進出のお笑いコンビ・見取り図が売れる条件

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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12月20日、2020年『M-1グランプリ』の決勝戦を見ながら、筆者は「見取り図」の優勝を願っていた。だが結果は、オール巨人とナイツ塙の2票で、優勝は中川家礼二、立川志らく、サンドウィッチマンの富澤の3票を得たマヂカルラブリーであったことはご存知の通りである。

なぜ、見取り図の優勝を願っていたのか。それはオール巨人が言ったように、3者の中で唯一しゃべくりマンザイだったからだ。審査員はどういう基準で優勝者を選ぶのだろうか。

「その場でどれだけ受けたか」

「自分の好みにあうかどうか」

「将来性」

基本的には、これらの総合点で選ぶのであろう。「その場でどれだけ受けたか」に関してはマヂカルラブリーである。設定は野田クリスタルが「負けた気がするから電車のつり革に掴まりたくない人」という優れたものであった。だが、この設定はきちんと生きていたのか。筆者にはそう思えない。野田は、よろけて転んだり、そこに車内販売が来たり、小銭をばらまいたりする様子を仕草で表現する。

[参考]『THE MANZAI』は今年の形式が良いと思う理由

だが、笑いが来るのはツッコミの村上が「こんなところでションベンするな」とか、「めちゃくちゃ人が倒れているじゃないか」などと指摘する部分なのである。つまり、野田の仕草単体では笑いは来ないのである。それで良いのだという意見もあるだろう。これがもっと高度になるとどうなるか。

まず、野田の仕草の部分で、さざ波のような笑いが起こる。その笑いの波は伝染して、会場の前の方に押し寄せてくる。次々と笑いの波は重なって大波になる。大波は村上のツッコミによって爆発する。会場がうねるような笑い。これくらいの可能性を秘めた設定だと思う。

盛山晋太郎(34歳)と、リリー(36歳)の「見取り図」は、将来性に関しては三者中、ナンバーワンだろう。だが、彼らにも注文がある。盛山晋太郎が汚いのである。長髪が汚い。「汚いのはダメよ」というのは筆者の敬愛する某女性プロデユーサーの言葉だが、とくに女性の、見た目の好感度が上がらない限りはスターにはならない。芸人ももちろんである。

イケメンでなければならないとか、そういうことではない。りんたろーと兼近大樹のEXITは少しも汚くない。千鳥の大悟は汚いのを2ミリくらい前のギリギリで寸止めしている。大スターであるダウンタウンも汚くはない。ちょっと汚いのは笑い飯であろう。中川家と匹敵するマンザイの技術を持っていると思うが、スターの位置に上り詰めないのは西田幸治が汚いからである。汚さは努力で変えられるのだから、汚くないほうがよいのではないか。

笑い飯は筆者が大好きなコンビだ、と先に断ってから言うが、一方の哲夫は『汚れ(ヨゴレ)』である。笑いの世界で言う『汚れ』とは、長い下積みの苦労が澱(オリ)のように溜まり、それが、見ただけでにじみ出てしまうキャラクターである。笑い飯が大好きなように、この汚れの芸人には哀愁を感じて筆者は大好きなのである。だとえばダチョウ倶楽部の上島竜兵もそうだ。

今回、「汚れ」を感じたのはもちろん「おいでやすこが」であった。ながく芸をやり続けて欲しいが、このあたりに優勝されても主催する朝日放送は困るだろう。

 

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