コロナ感染症の影響でテレワークになり、一日中家に居ることが増えた。そのせいで、いつもなら見ない昼間のテレビ番組を見る機会も増えた。この時間帯、どこのテレビ局も大体同じような番組編成で、長尺の情報番組か、これまで視聴率が良かったドラマの再放送ばかりである。
そんな中、すごくもったいないと感じたコンテンツがある。NHKが独占中継している「国会中継」だ。
口角砲を飛ばしながら、大臣を指差し詰め寄る野党議員。それに対して、しれっとした顔で、官僚の作ったカンペを読み上げるだけの大臣。時折、外野からの下品なヤジに、堪忍袋の尾が切れて、青筋立てて言い返す与党議員。売り言葉に買い言葉の応酬。
近頃、田原総一郎ばっかり喋っている「朝まで生テレビ」よりも、こっちの方がずっと楽しめるのは筆者だけか? こんな面白い国会中継なのに、NHKは最初にアナウンサーが、「只今より、予算委員会で代表質問を中継します。まず、最初は〇〇党の〇〇議員です」みたいな喋りの後、ただカメラが議場を写すだけ。
[参考]<記者こそ素人?>「ど素人NHK前田会長の大暴走」記事に違和感
なぜ「中継」なのに、実況がいないのか?「森友・加計」に「桜を観る会」、「学術会議の任命問題」などなど、突っ込みどころ満載のネタがありながら、淡々と放送時間が消化されていく。
プロ野球の実況で、ピッチャーが投げる球の一球一球まで深読みするのと同じように、国会中継でも、政治の裏の裏まで知っている解説者が、内情を深読み解説すれば、もっと面白いエンタメ番組になるだろうに。副音声で議員の隠れた人物像やエピソードを紹介してもいい。それから、強行採決の場面なんかは、昔のプロレス中継の古舘󠄁 伊知郎のような実況をやれば、もっと視聴率も取れると思うのだが。
NHKも視聴率が欲しいと聞くが・・・。
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落語で観客から見て右側は上手、左側は下手です。必ず上位者を上手に置いて演じるのでご隠居と与太郎ならば上位者のご隠居が上手、与太郎は隠居の左側、下手にいます。
1月7日緊急事態再宣言記者会見での2ショット、下手・与太郎サイドに菅総理、上手・ご隠居サイドに尾身茂分科会長が立っていました。テレビなどでは上下原則はルーズなので別に気にすることもないのですが、会見が進むにつれて「この二人の関係は与太郎とご隠居じゃないか」と思えるような展開になってきたのでした。
記者の質問にまず菅総理が短く説明をし、「詳しくは尾身さんから」とすぐに尾身会長に話を振るというパターンが繰り返されました。それだけでも、情けねえ、という印象は否めないのですが、お偉方の言いなりだなんて陰口も聞こえるご隠居ポジションの尾身会長は、さすが老獪に菅総理をあしらい、与太郎サイドの菅総理はそのあしらいに気づかない?という、まさに与太郎滑稽噺の一場面を見せられているような気がしてきたのです。もちろん笑えない噺ですが。
それが会見ではっきり見えたのが2月7日までの1ヶ月という緊急事態宣言期間の話です。冒頭発言で菅総理は「1ヶ月後には必ず事態を改善させる」とミエを切ったのですが、記者から宣言解除の条件について問われると「仮定のことについては答えは控えさせていただきたい。何としても1ヶ月でという思いで・・・」とトーンダウンし、すぐに「1ヶ月で収束するかといった見通しなどは尾身会長の方がよろしいと思います」とご隠居ポジションに振って逃げちゃったのです。
しかし、この前々日、尾身氏は「1ヶ月で下火にするのは至難の業、それが3月、4月か分かりませんけど」と語り大きく報道されていました。菅政権はこの発言を無視する形で1ヶ月と決め、菅総理はその上で話を尾身氏に振ったのですから、尾身氏は二日前の発言を修正するものと思われたのですが、そこはご隠居、与太郎にひれ伏したわけではありませんでした。
尾身のご隠居「1ヶ月で感染を下火にして、ステージ3に近づきたいと思ってます。私どもは、その近づくための条件が4つ、私はあると思っています」として以下の4つの条件を挙げました。
1.具体的な、強い効果的な対策を打つこと
2.国と自治体が一体感を持って明確なメッセージを国民に伝える
3.できるだけ早く(特措法の)改正をして経済支援などとひもづける
4.国民のさらなる協力を得る
これは実に奇妙な発言です。この記者会見で菅総理は国民に向かい、効果的な対策?を示し、明確?なメッセージを伝え、法改正を急ぐとし、国民に協力を求めたばかりです。ところが尾身のご隠居の文言は国民に向かってではなく菅・与太郎政権に向かって実現のための条件を突き付けている文言なのです。与太郎さんにもわかるように言い換えれば、尾身のご隠居は与太さんに向かってこう言っています。
「与太さん、お前さんたちは強い手を打ってないし、あんたらお上のご意向は世間に伝わっていないじゃないか。法の改めも遅れてるし、こんな事で世間が動いてくれるのかい?」
そして尾身氏はこう結びました。
「私は、今申し上げた4つの条件を満たすために日本の社会を構成するみんながしっかりと頑張れば、1ヶ月以内でもステージ3に行くことは可能だと思っています」
「日本の社会を構成するみんな」とは一般の国民ばかりでなく、行政のリーダーたちを指していることは2日前の尾身会見で明らかなのです。
「国や自治体のリーダーは選挙で選ばれた人たちですよね。自分らも汗をかく。自分らも難しいことをやる、いろんな措置をやる、経済的支援をやる。自分らも汗をかく、だから一般の人もやってくださいというメッセージがないと…このことが私は極めて重要だと思います」
尾身のご隠居は短い文言中に「自らも汗をかく」を2度くり返し、明らかに菅・与太郎総理に向かって厳しく叱咤激励しているのですが、菅総理は自分への叱咤だと気づいたのかどうか。
これと似たようなことがもうひとつあります。宣言の解除条件です。解除に前のめりな政府はステージ3とか東京の新規感染者数が日に500人とかのきわめてゆるい条件をさかんにアピールしています。尾身氏は2日前の会見ですでにこの点にも触れていました。
「緊急事態宣言によりすみやかにステージ3に下げ、宣言解除後もステージ2までは対策を続けることが重要です」
宣言を解除してもステージ2まで対策を続けなければ意味がないと菅総理に説いているのですが、これも与太さんに届いているのかどうか。落語の世界で粗忽者の象徴が与太郎ですが、じつは与太郎はまるっきりの馬鹿ではありません。正直で隠しごとのできない町内の愛されキャラで、時にはけっこう賢く立ち回る役割なのです。怖れ多くも天下の総理大臣を与太郎に準えてきた非礼をお許し願いたいのですが、そうした与太郎に学ぶところがないわけでもないと感じるのです。
菅総理は言葉が流暢ではありません。論理的な説明や感情表現もお上手とは言えません。時に「何言ってんだかわんない」状態です。だから説得力に欠けます。さらに決定的なのは安倍政権の官房長官だった菅総理に対する国民の信頼が薄いことです。安倍・菅政権は理不尽な無理筋通しを続けました。それを何とか言い逃れても国民は納得したわけではありません。そのたびに信頼は確実に削り取られて来たのです。この不信感の蓄積が二人を襲っています。信頼されない総理に説得力はなく、このままで菅政権のコロナ対策が成功することは困難でしょう。
そこで起死回生、ここは一番、与太郎に倣って「馬鹿正直」でやり直したらどうでしょう。すべての事実をぶっちゃけて、町内の若いもんから「しょうがないね与太は、なんでも洗いざらい言っちゃおしまいだよ」なんてからかわれているうちに、「与太の言うことにウソはないよ、腹に悪い了見なんぞこれっぽっちもねえんだから」てなことになって行きます。
昨春以降のPCR・医療・保健所体制の強化失敗、GoToこだわりの弊害、第3波対応の遅れ、無謀な五輪への固執、ワクチンだって順調に進んでも集団免疫を獲得するには1年2年かかるのがホントの話。国民の多くはそう思っています。もう謝るところは謝り、事実とエビデンスをすべてぶっちゃけて出直したらどうですか。
コロナ対策に成功した台湾のオードリー・タン氏を取り上げたTBS「報道特集」の中で、「徹底した透明性と公開性」により台湾政府が信頼され、市民の強い協力を得てコロナを克服したとしています。信頼とは口先ではなく徹底した透明性と公開性で獲得するものです。その上で、信頼されるリーダーにより人々の気持ちがまとまることがコロナ対策の要諦と尾身のご隠居も多くの方々も言っているのですが、肝心要の与太さんには届かない話なのかもしれません・・・。
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「ちょっと何言ってんのかわかんない」はサンドウィッチマンのネタですが、菅総理の「ちょっと何言ってんのかわかんない」話の数々を聞いているうちに医療ばかりか日本社会が崩壊しそうな気配になってきました。
菅総理の「わかんない話」にはいろいろなパターンがあります。まずは言葉そのものが何言ってるのか聞き取れないパターン。1月10日NHK「日曜討論」での発言。
「政府と与野党の協議会というのがありまして、まあ、キセスベキケントウ、シンチョウスベキ、ケンチョナガアリマス」
なんどもくり返して聞き直しましたが、筆者にはカタカナ部分は理解できませんでした。わかりますか?
次に言葉はわかるものの、その意味がとれないパターン。同じ番組で緊急事態発出後の「人出の状況をどう評価しているか?」と聞かれて、
「まだ始まったばかりでありますから、最初はやはりテレワーク7割減と私もお願いしました。しかし休みの前の打ち合わせ等がありましたのでそこは下がっていますけど、思ったほどではなかったのですが、今はかなり大丈夫だろうと思っています。」
これを何度も何度も聞き直したところ、おそらく以下のような意味の文言ではないかと。
「最初はテレワーク7割減とお願いしました。その時はまだ始まったばかりで休みの前の打ち合わせ等がありましたので、実行割合が低く、期待したほどではなかったのですが、今はかなり実効割合が上がって大丈夫だろうと思っています。」
自民党の方が「菅総理は語彙が少ないので説得力がない」と言ったそうですが、語彙よりも話の構成、ことばの並びがメチャクチャなことがわかりにくい要因でしょう。放送を視ながら素直に理解できた視聴者はほとんどいなかったのではないかと思います。どうしてこの時にこういう趣旨の発言をするのか、という意味で「ちょっと何言ってんのかわかんない」パターンも多々あります。
1月4日年頭記者会見。感染者が激増し、2度目の緊急事態宣言発出について菅総理は江川紹子さんの質問にこう答えました。
「どこが問題かということはかなり明確になっていますので、(飲食に)限定的に、集中的に行うことが効果的だというふうに思っています」
せっかくの緊事宣言という切り札を切って国民の危機感を高めようとするはずが、限定的、集中的にと言葉を弱め、アピール効果を薄めてどうすんの、っていう話です。さらに1月7日再緊急事態宣言発出の記者会見、菅総理の冒頭発言です。
「期間は1か月です。第1に飲食店の20時までの時間短縮、第2にテレワークによる出勤者数7割減、第3に20時以降不要不急の外出の自粛、第4にスポーツ観戦、コンサートなどの入場制限であります。」
この4点を対策パッケージとし、飲食店の営業時間短縮が対策の急所と語りました。4点パッケージには昼間の外出自粛要請4県境を越えての往来の自粛などは含まれていません。なぜこんなにユルーイ対策なのか、何のための宣言で何がしたいのか「ちょっと何言ってんのかわかんない」です。
ところが、菅政府は強い批判を浴びて翌週には、「昼間の外出自粛要請をしていないというのは国民の誤解だ」と言い出しました。「第3に20時以降不要不急の外出の自粛」としか言っていないのでから絶対に国民側の誤解ではありません。誤解だなんて「ちょっと何言ってんのかわかんない」発言です。
さらに県境をまたいでの往来自粛要請についても、分科会の一部の専門家は「今回の宣言の中に含めるよう強く主張し、認めれて宣言に含まれている」とテレビで公言しました。しかしなぜか4点パッケージにはありませんし、政府側から宣言の中にあるという話は聞こえてきません。まったくもう「ちょっと何言ってんのかわかんない」状態がひどすぎます。
とにかく政府と国民の間のコミュニケーションがとれていません。これほど菅政府の言うことが「ちょっと何言ってんのかわかんない」状態では感染抑制が進むはずもありません。いまや菅政権のやることなすことすべて裏目裏目の連続で国民の信頼は地に落ち、医療崩壊とともに政権崩壊状態です。こんな状態に筆者はかなり怖くなってきました。大げさではなく日本社会の崩壊すらも視野に入ってきたのではないかと感じたからです。
若者たちは感染しにくく重症化リスクも低いので医療崩壊など怖くないのかもしれません。しかし、医療崩壊を越えて日本社会が崩壊したら、あるいは日本社会の未来が大きく傷ついたら、その影響を真っ向から受けるのは老人ではなく若者です。
コロナに注ぎ込んだ何十兆円という膨大な予算のツケはいずれ誰かが支払わなければなりません。経済力が落ち込めば様々な社会サービスは低下し、世界とはマイナスハンデの競争を強いられます。コロナ禍が強く長く続けば、その分だけ若者は近い未来に過酷な重荷を背負うことになるのです。
コロナなど自分には関係がないと行動を変えない若者のみなさん、そのことでひどく傷ついているのは実は自分たちの未来だとは思いませんか。しかしそうは言っても、きっと若者にはこう言われるんでしょうね・・・。
このジジイ「ちょっと何言ってんのかわかんない」
老兵は消え去るのみ、傷ついた世の中に残ってツケを払うのはあなた方若者なんですがねぇ。
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DVD『紳竜の研究』(2007)には、2007年3月NSC(吉本総合芸能学院)で、ただ1回だけ開催された島田紳助の特別授業が収録されている。年代から判断すると、サボってさえいなければNSC30期の尼神インター、バンビーノらが生でこの講義を聞いているはずである。彼らは得がたい体験をした。筆者もその場に居たかったという思いが強くする。2時間弱、一気に見た。
この特別授業を自己啓発のようだと言う人もいる。そのとおりだろう。島田紳助は今の時代なら、妖しげな情報商材を日本一売り上げるセミナー講師になる能力さえ持っているだろうから。
筆者は昭和30年(1955)生まれだから、島田紳助や明石家さんまと同年代である。学年にすると筆者は彼らの1年上。紳助、さんまは、どうして知っていたのだろう、筆者を「さん付け」で呼んでくれた。あちらは、売り出しの若手人気芸人、こちらはなったばかりのチンピラ放送作家。天と地の開きのある立場だったのに。芸人世界の礼儀作法の中に筆者を入れてくれたのはありがたかった。
島田紳助DVDの特別授業のことを話そう。
紳助さんは「計画」の人だった。今で言ったらブランディングとでも言うべきか。ノートに年代ごとの自分のかなえるべき目標を記し、一歩一歩、実現いくのが道だと言っていた。紳助さんは仮想敵を定めていた。マンザイをはじめた頃はB&Bの島田洋七。特別授業で話していたが、紳助竜介(後に、竜助)は、島田洋七のスタイルをパクったのだそうだ。ただし違っていたのは「ネタが洋七さんの方が面白かったこと」だと言うが、これは気を遣ったのだろう。筆者から見たら「ネタは紳助さんの方が面白かった」
紳助さんは昭和・平成・令和の芸人の中では、ネタの中味が最もおもしろい人の一人である。匹敵するのは松本人志くらいか。さんまさんは、ネタの受け(フォロー)が日本で一番上手な芸人である。他人のつまらない話を拾って面白く変えるし、他人のネタを盗って自分のネタにしてしまう。それでいて嫌われない。資質が全くちがうからこそ、さんま紳助の二人は並び立ったのである。
ところが、二人は全くと言っていいほど共演しなかった。紳助さんは熱心に口説けば、受けてくれそうななそぶりだったが、さんまさんはとりつく島もない感じ。さんまさんの方が紳助さんのトーク力の高さを怖がっているように当時の筆者には感じられた。
ビートたけしも、もちろん仮想敵であった。特別授業では、ツービート、B&B、紳助竜介はすべて、同じパターンのマンザイであったと語る。考えてみれば、相方を従えてはいるが、スタイルは皆、アメリカ流のスタンダップコメディで、今のウーマンラッシュアワーも同じ。それに気づく暇もない程のマンザイブームだったのである。
マンザイブームが終わって、島田紳助は盟友の吉本社員・谷良一氏とともに『M-1グランプリ』を立ち上げ、自ら審査員となった。「プロデューサー・島田紳助」の誕生である。特別授業では『M-1』での勝ち方も語られるが、そのブランディングをそのまま真似られる人は相当少ないだろう。
プロデューサー島田紳助としては、彼が深く関心を抱いた番組『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京)のことを話してみたい。
紳助さんは石坂浩二さんとともに司会をしていたが、この二人、微妙に似たところがある。筆者は幸運にも別々の番組で二人とも知己を得た。石坂さんは、多くの人が知る料理自慢で、遊びに行った時は「鰻ざく」「う巻き」をはじめ、鰻料理の数々を手ずから腕を振るってごちそうしてくれた。筆者たちは客人はリビングで寛いでいるが、石坂さんは一心に料理を造っていて、こちらには出来た物を運んでくるだけである。
紳助さんのお宅にお邪魔したときは、会席料理のコースをつくってくれた。お吸い物・お刺身と続き、焼き物に季節の鮎の塩焼きが出たときは度肝を抜かれてしまった。紳助さんも調理場に行ったきりである。ふたりとも自分が楽しむより、人を楽しませるのが好きなのだ。
特別授業で話していたように、紳助さんはあるテクニックを使って、膨大な知識を持っているように、自分を演出する特技を持っている。一方の石坂さんは、知らないと答えるのを恥だと考える知識の大家だ。その二人が、ある種、知識が活躍する『開運!なんでも鑑定団』で並び立つのか。二人の不協和音も聞こえてきた。
そんな時期に、筆者は『開運!なんでも鑑定団』のスタジオに行ったことがある。紳助さんに、ある芸能人と組んで司会をやって欲しかったのだがマネジャーはNGだと言う。それを本人に直談判して納得してもらおうと思ったのである。今から考えれば無理筋であった。何しろ、紳助さんにはブランディングがきちんとあるのだ。筆者はマネジャーに「紳助さん本人がNGだと言っているなら、はっきり言ってくれ」と抗議したが、「吉本のマネジャーの言うことは、本人が言っていることです」と答えたので、筆者はこのマネジャーを以後深く信じることにした。
そして、島田紳助は引退して、長谷川公彦になった。
筆者は、今、この長谷川公彦に猛烈に興味がある。話が聞きたい、話をしてもらいたい。もし、2時間時が取れたら、どうぞ自由に、話してほしい。ただし、聴き手は明石家さんまで、である。
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菅義偉首相が国会での説明から逃げ回るなら直ちに首相を辞任するべきだ。
11月に感染拡大が鮮明になった。11月12日に国内の新規陽性者数が3ヵ月ぶりに過去最高を更新して1660人になった。11月18日には新規陽性者数が初めて2000人を超えた。東京のGoToトラベルが始動したのが10月1日。その影響を順当に反映して新規陽性者数が急増し始めた。
11月18日の会見で日本医師会の中川俊男会長は「GoToトラベルが感染者増のきっかけになったことは間違いない」と明言した。11月20日には菅内閣のコロナ対策分科会会長の尾身茂氏がGoTo見直しを提言し、「英断を心からお願いする」と述べた。
しかし、菅義偉首相は12月14日にGoToトラベルの全国一時停止を発表するまで何もしなかった。何もしないどころか、11月21日からの3連休に全国各地に人が移動するGoToを全面推進した。11月25日から「勝負の3週間」と唱えたが、実態は「感染拡大推進・勝負の3週間」だった。
GoToの人出急拡大を受けて12月中旬から新規陽性者数の拡大に歯止めがかからなくなった。12月11日のニコ動に「ガースーです」と自己紹介して登場した菅義偉首相はGoToトラベル一時停止について「そこはまだ考えていません」と述べた。
ところが、12月13日発表の毎日新聞世論調査で不支持率が支持率を上回ったことを受けて12月14日に突然のGoTo全国一時停止を表明。しかし、その足で向かったのは銀座での高齢者8人によるステーキ忘年会だった。国民には5人以上の会食を控えるように要請しておきながら、自分は8人での忘年会に参加した。しかし、GoTo一時停止を12月14日に表明しながら、実施は12月28日だった。12月27日まで全国で「駆け込みGoTo」が沸騰した。北陸地方では12月28日までズワイガニ相場が異常高騰を示した。
すべてはGoTo狂騒曲によるもの。12月31日に東京都の新規陽性者数が1000人を超えた。首都圏1都3県の知事が1月2日に緊急事態宣言発出を要請した。このときも菅義偉首相は自分で対応せずに裏に隠れた。支持率がさらに急落することを恐れて、1月4日になって緊急事態宣言発出の「検討に入る」ことを表明したが、このときには1月9日からの実施とする腹積もりだった。1月6日の全国の新規陽性者数が6000人を超えた。GoToで日本全国にウイルスをまき散らしたことに伴う順当な結果だ。
1月7日に菅内閣が緊急事態宣言を発出するにあたり、国会は政府から事前報告を受けることを決めた。国会では1月7日、衆参両院で議院運営委員会を開き、政府からの報告を受ける。時間は各院それぞれ40分。野党は菅義偉首相の出席を求めたが、自民党が拒絶した。例によって森山裕自民党国対委員長と安住淳立憲民主党国対委員長が協議して決めたが、なぜ、安住氏は自民党の言いなりになるのか。
国民が緊急事態に直面している。菅義偉首相が強引に主導したGoToトラベル事業が国民の危機を創出した。菅首相が出てきて説明するのが基本の基本。都合が悪くなると姿をくらまして部下に説明を押し付ける。さすがは令和版インパール大作戦首謀者だ。
しかし、与党の言いなりの安住淳氏も更迭されるべきだ。重大事案であり、衆参両院で2時間ずつ時間を確保して、野党による質疑を行うべきだ。GoToEatと叫んでいた菅義偉首相が一転してDon‘tEatと叫んでいる。国会が菅義偉氏に厳しく問いただすことは当然でないのか。
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朝の情報番組を立ち上げるには、中心の司会者と、1人から3人のコメンテータをキャスティングできれば、立ち上げの仕事の70%は終了である。
これまで最低2つは成功した朝の情報番組を立ち上げた筆者の放送作家としての経験則である(『みのもんたの朝ズバッ!』『はなまるマーケット』)。経験則だから、古くなるのであり、更新することが必要であるが、今のところまだ使える。
残り30%は、内容、音楽、見術セットなどである。特に「内容」についていうと、テレビ局はこの「内容」を任せられるディレクターを育ててこなかったように思う。曜日毎に最低2人は必要だが、そこが育てられていないので、元々の感覚の優れている「できるディレクター」が1人ぐらいいる、というのが実情だろう。
となると、より重要になるのが、70%の部分を占める「キャスティング」である。『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)は、この部分で他局を圧倒している。圧倒しているから、視聴率でも他局の追随を許さない。
この強さを、軽く示した好例が1月4日(月)の放送であった。まずメンバーを紹介しておこう。
*羽鳥慎一(1971年生まれ):元日本テレビ男性アナウンサー。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、日本テレビ入社。野球の実況をしたかったためである。現在フリー。
*山口真由(1983年生まれ):日本の弁護士、ニューヨーク州弁護士、専門は(英米法:家族法)。元財務官僚。東京大学法学部を卒業。ハーバード大学法科大学院修士。
*玉川徹(1963年生まれ):テレビ朝日報道局局員。報道局の主任として『スーパーモーニング』などの番組でディレクター、リポーター。京都大学大学院農学研究科修士。
*ゲスト・瀬古利彦(1956年生まれ ):元マラソン選手、陸上競技指導者。日本陸上競技連盟の強化委員会マラソン強化戦略プロジェクトリーダー。南カリフォルニア大学在籍。早稲田大学教育学部卒業。
*石原良純(1962年生まれ):タレント、気象予報士。慶應義塾大学経済学部経済学科卒業。
番組でコロナの話題が終わって、5分ほどの箱根駅伝の話題になった。最終10区でのレースは日蓮の法華経(創価大学)を道元の曹洞宗(駒澤大学)追う史上稀に見るデッドヒート。結局、曹洞宗が法華経を抜き去り優勝した。前回覇者のプロテスタント米国メソジスト監督教会(青山学院)は4位に終わった。
このことについて、次のような会話がなされた。
最終区に限らず、駒澤大の大八木監督はランナーに「男だろ」と伴走車から声を掛けて鼓舞し続けていた。
羽鳥「最近の子は萎縮しちゃうんじゃないですかね」
玉川「僕は、ジェンダーの人はひっかからないんだろうかと気になってました」
山口「男だろと声を掛けないと走れないのは納得できないです」
瀬古「監督はそこまで考えてないですよ。昭和の男ですから」
玉川「ジェンダーなんて聞くと僕はビビっちゃうけどね」
最後に羽鳥が瀬古にこう聞く。
羽鳥「瀬古さん、早稲田は?」
瀬古「来年優勝です」
それぞれの出演者が自分に割り振られている役柄設定や性格設定を見事にわきまえて発言しているからこそ。短い間にこれだけ見事なトークが成り立つのである。石原良純の「危うきに近寄らず」も、正しい判断。当分、『羽鳥モーニングショー』の視聴率という岩石で出来た石垣は揺るがないだろう。
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菅内閣の能力不足が日本の市民を不幸に陥れている。東アジアのコロナ被害は相対的に軽微だ。中国、台湾、韓国、日本を比較してみる。
人口100万人当たりコロナ死者数は以下だ。
台湾:0.3人
中国:3人
韓国:19人
日本:29人
欧米では、
ベルギー:1700人
イタリア:1253人
英国:1108人
米国:1091人
日本の人口当たりコロナ死者数は欧米比では30分の1から50分の1だが、中国の10倍、台湾の100倍だ。コロナ感染抑止のための菅内閣政策対応が後手後手だ。国内の新規陽性者数が1660人になり、3ヵ月ぶりに過去最高を更新したのが11月12日。11月18日には新規陽性者数が初めて2000人を超えた。
東京がGoToに組み込まれたのが10月1日。人の移動拡大が3週間後の新規陽性者数拡大につながる。この関係を順当に反映して新規陽性者数が急増した。11月20日にコロナ対策分科会が感染拡大地域のGoTo見直しを提言。
「英断を心からお願いする」
と述べた。しかし、菅内閣は11月21日からの3連休の人出拡大を意図的に放置した。感染抑止よりも旅行業界への利益供与を優先したのだ。札幌、大阪、遅れて東京でGoTo見直しが行われたが、すべて、それら地域を目的地とする旅行だけの停止で、これら地域を出発地とする旅行は停止されなかった。
11月21日からの3連休の人出拡大を背景に12月中旬から新規陽性者数が急増した。12月12日には全国の新規陽性者数が初めて3000人を突破した。このなかで菅義偉首相は12月11日にニコ動に出演。「ガースーです」と自己紹介し、GoTo一時停止について問われると、「そこはまだ考えていません」と答えた。
12月12日に新規陽性者数が3000人を超え、12月13日発表の毎日新聞世論調査で内閣支持率が40%に急落する一方、不支持率が49%になって支持、不支持が逆転した。世論調査結果を受けて菅首相の態度が急変。12月14日にGoToトラベルの全国一時停止が表明された。
しかし、菅首相はその発表後に銀座で開かれた8人でのステーキ忘年会に参加。GoToの一時停止も12月28日からの実施とされた。感染拡大を放置すれば影響は幾何級数的に拡大する。2週間後の実施という判断に菅内閣の驚愕の「のろさ」が表れている。
12月31日、東京都の新規陽性者数が1300人を超えた。これを受けて1月2日に首都圏1都3県知事が緊急事態宣言発出を要請した。菅首相が対応することは可能だったが、表に立たなかった。しかし、内閣支持率がさらに急落することは必至で、この点に思いを致したのか、1月4日になって緊急事態宣言の検討に入ることを表明した。12月28日から実施した外国人の入国制限も、もっとも数が多い、感染状況が落ち着いている国・地域を対象にした、
1.出張などの短期滞在者を2週間待機免除で受け入れること
2.駐在員や技能実習生などの中長期滞在者を2週間待機付きで受け入れること
を除外したものだった。菅首相は「先手先手」と自画自賛したが、ザルの入国規制だった。1月7日に発出されると見られる「緊急事態宣言」もザル宣言になる可能性が高い。単なる「夜8時以降の飲み会禁止」宣言に過ぎないものになる可能性が高い。相変わらず「戦力の逐次投入」で、「戦略失敗の認定と撤回」が行われない。
菅中将のインパール大作戦は大失敗に終わり、菅中将は責任を明らかにする必要が出てくる。それでも菅中将は、「作戦は私のせいではなく、部下の無能さのせいで失敗した」と言い張るのだろうか。
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テレビドラマ『共演NG』の特別編をTverで見た。最もびっくりしたのはストーリー終了とともに、全六話を含めたDVD発売が告知されたことだ。なんと手回しのいい。商魂たくましく、少しでも金儲けのチャンスがあれば、逃さないぞ!との、気迫さえ感じられて・・・というか、大物歌手がやる舞台公演を見にいって、半ば強制的に取らされる休憩の間にロビーに出たら、売店で、もうその日の公演のDVD発売を店員が大声で告げている場面に遭遇したような、しらけた気持ちだ。もうちょっと舞台に酔わせてほしい。
特別編の内容は、いわゆる総集編であった。斎藤工の演じるショウランナー(ドラマの何でもかんでもを牛耳る役目の人・最高権力者)市原準が、なぜこのドラマを企画したのかが、本編ドラマではサスペンス仕立てで、と言っても思わせぶりな画像が入るだけだが、描かれていたので、これをやる必然は担保されている。スポーツ紙の芸能記者が市原に疑問をあてるという形で番組は進む。その間に関連するドラマのキスシーンなど印象的なシーンがカットバックされる。この総集編の見せ方は新しい。敬服する。
普通なら、ドラマの出演者がトークセットに集まって、ドラマを振り返るなどの手法をとるが(もっと普通は、ただの再編集)そういうぬるい方法をとらなかったのはすばらしい。前記の手法は大竹しのぶと明石家さんまが『男女7人秋物語』で、やったときにはなんて新しいのか、と思ったものだが時代は過ぎて行く。
残念なのは市原準が描くところの、サスペンスの伏線は視聴者の中ではほとんど回収されていたことであった。残る疑問は、市原がなぜ全部を牛耳るドラマがつくりたかったのかである。
(以下、『共演NG』特別編より引用)
「共演NGという危険を冒してまで、あなたはなぜこのドラマをつくりたかったのですか?」
市原「日本のドラマを変えたかったからですよ。ここ数年、配信系メディアを通じて、世界中の優れたコンテンツが続々と押し寄せてきているのに、日本のドラマは大きく遅れをとっている。そして、その差は今後ますます広がるでしょう。脚本、キャスティング、業界のしがらみ、あらゆる忖度、制約が邪魔をして、優秀なクリエイターが挑戦できないでいる。だから、すべてそれを取り除いた状態で、このドラマをつくりたかった」
記者「テレビドラマに革命を起こそうと?」
市原「そんな大げさなものではありませんが」
記者「テレビ東洋を選んだのもその理由?」
市原「そうですね。テレビ東洋は、在京キー局の中でもっとも弱いテレビ局です。でも、もっとも、テレビへの愛のある局でもある。真の革命は愛によって導かれる。チェ・ゲバラの言葉です」
(以上、引用)
なんだ、そんな理由か、説教じみた正論か。というのが、正直な感想だ。忖度しないといいながらも、テレビ東京への気遣いは最高レベルである。チェ・ゲバラが言った正確な言葉は『真の革命家は偉大なる愛によって導かれる』であるらしい。
『真の革命は愛によって導かれる』とは、革命家という人への愛と、革命そのものへの愛では意味が違ってくるなあと思うという感想も付け加えておく。けれど、ドラマはフィクションだから、これはこれでいいのか。
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「かもめんたる」(岩崎う大:42歳、槙尾ユウスケ:40歳)という二人組のコントユニットがいる。しゃべるコントだが、知性を感じさせて、他の芸人ユニットとは一線を画す。2013年のキングオブコントで優勝した際に演じた「白い靴下」は、不条理さえ感じさせて演劇的である。
かつて「コント55号」のコントは文化人と呼ばれる権威から、「これまでにないサミュエル・ベケット(『ゴドーを待ちながら』)を感じさせる「不条理コント」であると認められたため、一気にブレークしたという経緯がある。もちろん、かもめんたるの勢いの点ではコント55号の10分の1程度ではあるが、そのあたりがコント55号と似ていないこともない。
かもめんたるの不幸はキングオブコント優勝でも、その後が続かない点にあった。つまり、スターにはなれなかった。
その理由は簡単だ。フリートークが出来なかったからである。テレビが求めるフリートークは自分自身の切り売りだが、彼らにはそれが出来ない。フィクションのトークなら出来る。司会も恐らく出来るがやりたくはないのだろう。そのあたりはインパルスの板倉俊之と似ている。インパルスのコントも知性を含んでいたが(あくまでも板倉のみ)、彼らに共通するのは「創作」が好きなことだ。
テレビを舞台にスターになるというモデルはどんどん崩壊しているが、それでもまだまだテレビは強い。フワちゃんやHIKAKINが一般人に認知される有名スターになったのは、テレビに出たからだ。彼ら・彼女らはYouTubeのみのスターでは満足していないのだ。
では、かもめんたるがロールモデルにするべき人は誰なのだろう。
クレージーキャッツやドリフターズはミュージシャンからコントマンになった。クレージーはとくに、アメリカ流の歌と踊りのショウも取り入れた。テレビ番組「植木等ショー」のビデオを見たが、他にザ・ピーナッツや坂本九などの当代一流の日本人ショウマンが出ているのに、MGMのミュージカルには、ほんの少しも届いていない、それでも、日本人は熱狂した。ドリフはコントに特化した。テレビのコントがまだ受け入れられていて人が笑ってくれた時代だ。クレージーもドリフも大メジャーになった。
コント55号のコントは誰も真似できない新しさだったので、そのままテレビが受けいれた。『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』 (日本テレビ)というコント番組にコント55号が出た。当時、アメリカNBCで放送されていたコント番組『ラフ・イン(英語: Rowan & Martin’s Laugh-In)』をモデルにした番組で、今は、絶滅危惧種であるコント作家が書いたショートコントをそのまま台本通り役者に演じさせるのが目的の番組だった。それゆえ、「ゲバゲバ」のコント55号は全く面白くなかった。台本どおりやるのが約束の番組で、アドリブを封じられ(または萩本だけアドリブを許され)たのが、その理由である。
萩本は司会もやったが、フリートークや司会は実は苦手だと自分で気づいていた。ドラマ風の芝居も上手ではないことが分かっていた。それを跳ね返すため、萩本欽一は自分でテレビ番組の企画を考えた。タレントとしての自分だけでなく自分を含む番組企画として、テレビ局に強烈な売り込みをかけた。各テレビ局にはコント55号のコントが好きなプロデューサー、ディレクターが存在した。他人が立てた企画はやらないという禁欲的な方法をとった萩本は、『欽ドン』(フジテレビ)『欽どこ』(テレビ朝日)『ぴったし☆カンカン』(TBS)と次々と番組を成功させた。自分が動けなくなった分は若い役者のちからを借りた。司会には久米宏を抜擢した。大メジャーになった。(役者出身だが関口宏は萩本と反対である。企画力をアウトソーシングした。『クイズ100人に聞きました』(TBS)『知ってるつもり』(日本テレビ)『サンデーモーニング』(TBS)皆、関口のために制作者が提案したものである)
渥美清は40歳の時に「男はつらいよ」に身を投じ、その後、コントには戻ってこなかった。その後はご存知の通り、寅さんとして大メジャーになった。
森繁久弥もコントから映画スターになった。「夫婦善哉」には笑いがない。コメディアンが皆、役者になってしまうのは森繁の成功のせいだと嘆く人がたくさんいた。大メジャーになった。
明石家さんまはテレビではコントをやらない。コントはテレビのコンテンツではないと思っている節がある。年に一度程度のペースで、村上ショージやジミー大西、ラサール石井、松尾伴内らとやる舞台のコント『今回はコントだけ』シリーズのレベルは現時点で日本最高峰である。さんまはさんま独自の笑いの文法を確立しており、それに従う芸人も多いため、スーパーメジャーである。司会者としてはウケとフォローの出来る希有な司会者だと萩本が認めている。ウケとフォローとは、他人のつまらない話を笑いに変えてしまう高等技術のことである。
所ジョージにはコントを書いていた。だが彼はコントを余技だと考えていた。あるプロデューサーは、所の司会は編集せねばならないところがほとんどなく、全部使えると言っている。バラエティの司会者としてはナンバーワンだろう。
タモリは、コントと音楽と、残念ながら踊りではなくトークで、語り継がれるべき名作『今夜は最高!』(日本テレビ)をつくった。ここでの『コントで笑いが取れる時代はもう終わった」との発言が印象に残る。昼の番組に出たので、押しも押されもせぬメジャーになったが、この人のすごいところは、テレビ自体を、テレビに出る自分を卑下していることである。
ビートたけしが、浅草に辿り着いたときには、もう軽演劇の時代は終わっていた。浅草のコントはもう過去の物だった。それで、スタンダップ・コメディアンになった。今も時たま、テレビでコントをやるが、それは、漫画のようなコントだ。芝居ではない。司会者としてはメインの隣で茶々を入れるというポジションを確立して揺るがないように見える。フランスでは、日本を代表する映画監督として評価される存在だ。映画が撮りたいからテレビに出ていると思っていたが、そうでもないところも最近見えてきた。
ダウンタウンは今、漫才もコントもやらない。漫才については分からないが、コントをやらないのは、動けない年齢になってしまったことを自覚しているからであろう。賢明なことである。動きがないのはコントではない。松本人志の類い稀な発想から紡ぎ出される漫才には、誰も及ぶ物がなく、これを見た島田紳助に漫才をやめることを決意させたほどである。
内村光良は紅白歌合戦の司会者であるが、彼のコント番組『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』(NHK)で、笑える人がいるのが、僕には不思議である。コントと正面から向き合えるレギュラー番組を持っているのは内村だけかも知れない。
三宅裕司はそつのない司会者になった。でも、司会の仕事ばかりが増えることには嫌気がさしている。伊東四朗との昭和臭のするコントには好き嫌いがあるだろう。
宮藤官九郎は、朝ドラも大河も書く大脚本家である。
かもめんたるは、今、劇団を組んで芝居をやっている。つかこうへい、東京乾電池(柄本明)、東京ヴォードヴィルショウ(佐藤B作)、野田秀樹、別役実、三谷幸喜と言った名前が思い浮かぶ。どうにかして、大メジャーになれるのだろうか。
かもめんたるには、是非、コント界で暴れ回って欲しい。
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12月20日、2020年『M-1グランプリ』の決勝戦を見ながら、筆者は「見取り図」の優勝を願っていた。だが結果は、オール巨人とナイツ塙の2票で、優勝は中川家礼二、立川志らく、サンドウィッチマンの富澤の3票を得たマヂカルラブリーであったことはご存知の通りである。
なぜ、見取り図の優勝を願っていたのか。それはオール巨人が言ったように、3者の中で唯一しゃべくりマンザイだったからだ。審査員はどういう基準で優勝者を選ぶのだろうか。
「その場でどれだけ受けたか」
「自分の好みにあうかどうか」
「将来性」
基本的には、これらの総合点で選ぶのであろう。「その場でどれだけ受けたか」に関してはマヂカルラブリーである。設定は野田クリスタルが「負けた気がするから電車のつり革に掴まりたくない人」という優れたものであった。だが、この設定はきちんと生きていたのか。筆者にはそう思えない。野田は、よろけて転んだり、そこに車内販売が来たり、小銭をばらまいたりする様子を仕草で表現する。
[参考]『THE MANZAI』は今年の形式が良いと思う理由
だが、笑いが来るのはツッコミの村上が「こんなところでションベンするな」とか、「めちゃくちゃ人が倒れているじゃないか」などと指摘する部分なのである。つまり、野田の仕草単体では笑いは来ないのである。それで良いのだという意見もあるだろう。これがもっと高度になるとどうなるか。
まず、野田の仕草の部分で、さざ波のような笑いが起こる。その笑いの波は伝染して、会場の前の方に押し寄せてくる。次々と笑いの波は重なって大波になる。大波は村上のツッコミによって爆発する。会場がうねるような笑い。これくらいの可能性を秘めた設定だと思う。
盛山晋太郎(34歳)と、リリー(36歳)の「見取り図」は、将来性に関しては三者中、ナンバーワンだろう。だが、彼らにも注文がある。盛山晋太郎が汚いのである。長髪が汚い。「汚いのはダメよ」というのは筆者の敬愛する某女性プロデユーサーの言葉だが、とくに女性の、見た目の好感度が上がらない限りはスターにはならない。芸人ももちろんである。
イケメンでなければならないとか、そういうことではない。りんたろーと兼近大樹のEXITは少しも汚くない。千鳥の大悟は汚いのを2ミリくらい前のギリギリで寸止めしている。大スターであるダウンタウンも汚くはない。ちょっと汚いのは笑い飯であろう。中川家と匹敵するマンザイの技術を持っていると思うが、スターの位置に上り詰めないのは西田幸治が汚いからである。汚さは努力で変えられるのだから、汚くないほうがよいのではないか。
笑い飯は筆者が大好きなコンビだ、と先に断ってから言うが、一方の哲夫は『汚れ(ヨゴレ)』である。笑いの世界で言う『汚れ』とは、長い下積みの苦労が澱(オリ)のように溜まり、それが、見ただけでにじみ出てしまうキャラクターである。笑い飯が大好きなように、この汚れの芸人には哀愁を感じて筆者は大好きなのである。だとえばダチョウ倶楽部の上島竜兵もそうだ。
今回、「汚れ」を感じたのはもちろん「おいでやすこが」であった。ながく芸をやり続けて欲しいが、このあたりに優勝されても主催する朝日放送は困るだろう。
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安倍首相が国会で完全虚偽の答弁を繰り返していた。国会では安倍首相が関与するスキャンダルのオンパレードだった。国会自体が安倍スキャンダルの総合商社の様相を示した。森友、加計、桜のトリプル疑惑。河井案里氏の参議院議員選挙の際には安倍事務所の要員が選挙活動を仕切っていたと伝えられている。
河井克行・案里夫妻は公職選挙法違反で起訴され、公判で審理が行われている。さらに、安倍晋三氏自身が暴力団関係者に面会して選挙妨害を依頼したとの疑惑も存在する。2017年2月17日の衆院予算委員会で福島伸亨衆議院議員の質問に対して安倍晋三氏が、
「いずれにいたしましても、繰り返して申し上げますが、私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして、(中略)私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい」
と答弁して以来、国会審議の大半は安倍スキャンダルに充当されてきたと言って過言でない。すべての疑惑は、いまなおまったく解消されていない。このなかで、いまから1年余り前の2019年11月の参院予算委員会で日本共産党の田村智子議員が桜疑惑について問いただした。政府主催行事の「桜を見る会」に安倍首相が後援会関係者を多数招待しているのではないかと追及したのだ。
これを契機に桜疑惑も一気に拡大した。政府主催行事であるにもかかわらず、安倍首相が自分自身の後援会関係者を多数招待していることが判明した。後援会関係者は大挙して上京し、桜を見る会の前夜には、全日空ホテルやホテルニューオータニで大規模な前夜祭が開催されていた。その前夜祭の参加費が一人5000円であることが明らかになり、常識をかけ離れた低価格にも疑問が集まった。
国会答弁で安倍首相は、
*前夜祭について安倍事務所が関与していないこと
*前夜祭の契約は参加者各個人とホテルとの契約によるもので、安倍事務所は無関係であること
*参加費はそのままホテルに手渡され、ホテルから個々の参加者に領収書が手交された
*安倍事務所とホテルとの間では見積書の交付も請求書、領収書等のやり取りも一切なかったこと
などを繰り返し説明した。ところが、これらの安倍晋三氏の国会答弁がすべて真っ赤なウソだったことが判明した。ホテルと契約したのは安倍晋三氏が代表を務める政治資金管理団体の「晋和会」だった。
前夜祭に参加した後援会関係者が1人5千円の会費を支払い、後援会の収入、支出は一切ないという、安倍氏の説明は虚偽で、安倍氏側が毎年200万円前後を補填していたこと、ホテルは後援会でなく安倍氏の資金管理団体である「晋和会」に領収書を出していたことなどが検察の捜査で判明した。
東京地検特捜部は安倍氏の公設第一秘書で後援会代表の配川博之氏らから事情聴取をしており、年内にも政治資金規正法違反の罪で略式起訴する方針だと伝えられている。「晋和会」の責任者である安倍晋三氏は違法行為について認識していなかったことにして、秘書が略式起訴され、安倍晋三氏は不起訴になると報じられている。
その安倍晋三氏を国会に招致することが検討されていることも報じられている。重大な犯罪が秘書の略式起訴、責任者の無罪放免、かたちばかりの国会での陳述で済まそうというストーリーが公然と流布されている。こんな国民を愚弄する決着が許されてよいわけがない。まず注目しなければならないのは立憲民主党の対応だ。いつものように国対委員長の安住淳氏が登場している。
安住淳氏は12月18日、「総理を辞めて3ヵ月後に東京地検特捜部の捜査対象になっている。虚偽答弁がずっと残ることになったら、憲政史上の汚点だ」とした上で、
「責任の重さを考えれば、今年中に実現するのが当然のこと」
「最低限、国民の皆さんが生でその一挙手一投足を見られる形にしなかったら国会に来る意味がない」
と発言した。
「言うだけ番長」とならぬよう、安倍晋三氏の予算委員会への招致が最低限必要だ。安住氏がいつものように森山裕自民党国対委員長の言いなりにならないか、監視が必要だ。
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12月14日に、『女芸人No.1決定戦The W 2020』(日本テレビ系列)が行われ、吉住が優勝した。今回の大会はどこが注目できるだろうか。
女芸人の頂点を毎年決める戦いも他のお笑い賞レースと同様に、面白いと評価されるまでには番組放送開始時よりなかなか時間がかかる。今回、場が盛り上がったのはBブロックからだろう。Aマッソのネタは、バックスクリーンに現れる映像を様々に活用しながら漫才をするネタであった。映像を活用することは、わかりやすくなるというだけでも有効であり、映像を活用しながらの漫才は幅を広げるもの。
続くゆりやんレトリィバァは、『サザエさん』(フジテレビ系列)のカツオの真似をしながら「姉さんは大きな間違いをしているよォ」と話し続けるネタ。人によっては全く面白くないという感想もあるが、それが証拠か、笑いとしては非常に突き抜けたものだと言えるだろう。
ゆりやんは本大会の第1回優勝者なので勝ち上がるのは他より難しい。Aマッソのネタは画期的なものなので、ゆりやんが勝つのはいっそうに難しかったはずだ。しかしながら接戦にてゆりやんが勝利を収めたのは、素晴らしい一戦だったことを裏付ける。
続いて出てきた吉住が最終的に優勝したわけだが、この点審査方式は物議をかもした。勝ち抜き戦方式なので、最初に出てきた芸人が不利だという声もある。次に、優勝した吉住に焦点を当てていきたい。本大会の特徴は、これまで優勝者がテレビでよく活躍できているということ。大会自体のレベルが高く評価されているとは言い難いにもかかわらず、しっかりと活躍できている優勝者を輩出していることは面白い特徴だろう。
また昨今売れた女芸人といえば、ニッチェ、おかずクラブ、尼神インター、ガンバレルーヤなどがあるが、これらは1年位で交代するような売れ方。今のところ『The W』の優勝者は、ゆりやん、阿佐ヶ谷姉妹、3時のヒロインと、この流れから外れることができている。単純な女性コンビが優勝していないのも特徴的だ。コンビが輩出されないお笑い賞レースと言えば、『R-1グランプリ』があるが、こちらの優勝者はピン芸人ながらもあまり個性的とは言えないのではないだろうか。『R-1』のここ2回の優勝者はコンビ芸人の片方であったりもする。
女芸人の世界では男芸人のように漫才師が重要な地位を占めがちであるという傾向がまだないようだ。ここにおいてピンの女芸人が個性を活かしてバラエティーで活躍する余地があるように思われる。ここにおいて吉住は、前に出る精神もあり、引き続き、『The W』の優勝者のバラエティでの活躍が期待できると言えるかもしれない。しかし一方で、似たような女コンビ芸人が1年交代でバラエティーで活躍するような状況もある。
ここにおいて女性バラドルを中心とする女性タレントの活躍はめざましく、最近行われた女性タレント同士が笑わせ合いをする『女子メンタル』は女芸人の活躍の場を大きく奪う可能性を示した。優勝した峯岸みなみの攻守のバランスは素晴らしく、他にも金田朋子の攻めのボケ力は昨今の男芸人でも敵わないレベルだろう。
またフリもボケもしっかりこなした朝日奈央は『女子メンタル』以来仕事が増え、峯岸とともにバラエティー女王と呼ばれるようになってきたようにも思う。今後『女子メンタル』の注目はいっそう大きくなり、『The W』や女芸人がいかに対抗できるかが問われてくるだろう。
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2020年のM-1グランプリであります。全ネタの寸評を書きます。
1.インディアンス(敗者復活組)
去年と同じく、ボケの田渕がザキヤマみたいに際限なくボケる漫才でした。早口でテンポもよく、2人の演技力も高いので、きちんとアドリブでひたすらふざけているように見えまず。それができるのは技術と不断の努力があってこそでしょうが、立ち止まってよく考えてみると田渕の言っていることのひとつひとつはしょうもない(=大喜利で出したとしたら評価されない解答)のです。それでも、あれだけの早さと厚みで繰り出されるからなんとなくおもしろくなってしまうのです。
ザキヤマも、普段テレビで見るときはあんな感じでしょうが、アンタッチャブルの漫才の時はもう少し早さと厚みを抑えて、大喜利力を上げて個々のボケを聞かせる感じにしてきていると思います。
ボケの中身がしょうもないと、ウケも頭打ちだと思います。いくらアドリブでふざけているように見えても、漫才である以上台本通りにやっていることだというのは背後に透けて見えますからね。「事前に考えたんならもう少し中身で勝負してくれよ」と思ってしまいます。田渕のあの感じは、アドリブでできてこそ見ている方のハードルも下がるのです。あと、ツッコミのきむは終始若干カミ気味だったかしら。
2.東京ホテイソン
巨人の言っていたことが私の考えに一番近いです。
2番目のボケを一例にします。「ピラニア・ライオン・オオカミ・シカ。動物たちの尻尾を取り出すとどうなる?」というクイズがボケのショーゴから出されます。ショーゴの言う答えは「消しゴム」です。「尻尾」というのは「最後の文字」という意味である、というのがショーゴの説明です。これがボケになっており、ツッコミのタケルが「い~やアンミカ!」と歌舞伎のような大袈裟なモーションと大声で正答を言いながらツッコみます。今回の漫才でお題になっていたのは終始この手の言葉のクイズでした。
何が問題かというと、ツッコミで正答だけ言われても本当にそれが正しいのかがはっきり分からないことです。こちらは最初のクイズを耳で聞いているだけなので、すぐには何が答えかが分かりません。なのでツッコミで答えを聞いてもイマイチ溜飲が下がりません。
ボケが堂々と間違いを言っているだけに、ツッコミが言ったことが本当に正しいかどうかを確かめないと不安を抱えたままになり、笑っていいものかどうか面食らってしまうのです。その正しさがツッコミを聞いた瞬間に理解できれば、もっと気持ちよく笑えると思います。
例えばTHE WのAマッソやバカリズムのネタみたいにプロジェクターでクイズを表示しながら漫才をやるのは一つの手だと思います。あんまり分かりやすくし過ぎるとお客さんにオチがバレてしまうので、表示する映像には多少の分かりにくさを残しておく工夫は必要ですが。
あとこれは松本の言っていたことでもありますが、たけるのツッコミは前述のように歌舞伎みたいに極限まで芝居がかった(悪く言えば、嘘くさい)大声です。このツッコミが、彼らの漫才の中の決め台詞になっています。でも、たけるはこの決め台詞以外の時もこのしゃべり方でしゃべるので(意識して抑え目にしてはいると思いますが、隠しきれていません。にじみ出ています)、あんまり決め台詞が映えていないと思います。ツッコミ以外の時はもっと普通にしゃべったらどうでしょうか。
1問目に対するツッコミも、この芝居がかった声でやることを意識しすぎたからなのか、非常に聞き取りにくかったです。1問目へのツッコミは、「ショーゴの説明に基づくと、正答として導かれる文字列が全く意味を為していない」というのがボケ(ズレ)の中核を為すため、その無茶苦茶さを聞き手に分かってもらうためにははっきり言ってもらわないといけません。
巨人のコメントの後にたけるに「い~やガチのダメ出し!」(それか、「い~やマジでタメになるやつ!」)って言って欲しかったですねえ。敗退決定時の彼らのコメントを聞く限り結構効いていたようですから。
3.ニューヨーク
おもしろいです。
屋敷は終始笑い顔を消しきれていませんでしたが、あれはもうそういう表情なんだと思います。今回のネタは、去年のとは異なり嶋佐のボケがかなり「悪」に傾いているため、笑いながらやるとお客さんが引いてしまうと思います。もうちょいちゃんと笑い顔を消せた方がいいでしょうか。
そして、2人とももう少し演技力を磨けると思います。
嶋佐はポーカーフェイスでボケをかましまくる人を、屋敷はボケのことを本気でおかしいと思う人を、いまいち演じ切れていません。特に屋敷の「なななななんやその話!」っていうツッコミは寒すぎて若干恥ずかしくなりました。この台詞は相当演技力がないとおもしろくできないので、台詞から変えた方がいいと思います。
4.見取り図
マネージャー役のリリーと大物タレント役の盛山のコント風の漫才でした。去年の漫才とは比較にならないほどおもしろかったです。「無意識でやってしまいました」の伏線まで張れていたのは見事でしたねえ。何より二人の素の漫才のキャラが合っていると思います。
特にリリーは、ポーカーフェイスで飄々とボケまくるので、「全然仕事のできないヤバいマネージャー」というキャラクターが非常にマッチしていました。盛山の素っ頓狂な声も、そのヤバいマネージャーに振り回される大物タレントの大変さをよく醸し出せていました。リリーは、本当にヤバいやつなのではないかという期待がすごくあります。是非、テレビで素の部分を見てみたいです。
5.おいでやすこが
ネタに伏線を入れていると私は褒めます。良かったです。塙の言っていたように、ボケにこの伏線以外の特別感はありません。特徴は何といってもおいでやす小田のやかましいツッコミです。あれだけウケをとるのは、台詞に風貌や声質が全て噛み合わないと無理です。何がどう噛み合っているのかの説明は私にもできませんが、多分冴えないおっさん風の見た目をしている小田が息を切らして騒ぐのが滑稽なんじゃないでしょうか。もっと若いとあんなにウケなかったと思います。
ネタ後の各審査員からのフリにもきちんとツッコめていたので、仕事は増えると思います。カンニング竹山的な仕事が増えると思います。体力を使いそうなツッコミなので、体には気を付けてください。
6.マヂカルラブリー
巨人も富澤も松本も「尻すぼみになった」という趣旨のことを言っていたのですが、最後にあんまりちゃんととツッコまないシュールなやつを入れ込むのも、野田の動き主体の偏差値の低いボケと同じくらいの比重を持った「らしさ」なんだと思います。野田がR-1でやっていた自作ゲームのネタなんかまさにそんな感じでした。「らしさ」を出して点数が伸びなかったのであれば、それはもうしょうがないことだと思います。
7.オズワルド
松本や巨人も言う通りツッコミは去年よりやかましくなっていましたが、好みの問題だと思います。どっちがいいとか悪いとかは特にないです。
私は一番おもしろかったですよ。欲を言えば、畠中はもうちょっと抜けた表情ができるといいと思います。自分がしゃべっていない間も、ずっと与太郎を演じて欲しいのです。雰囲気はカミナリまなぶと似ています。伊藤のツッコミも音量が上がったので、全体的によりカミナリに近くなりました。
8.アキナ
秋山が「前すいません」と2回言ったのが気になったんですけど、何の笑いにもつながっていなかったです。あれは何だったんでしょうか。審査員は順番のことを言っていましたが、あの人たちがそれを言い出したらおしまいだと思います。順番に関係なくネタのおもしろさだけで審査をしているよということにしないと、M-1が崖っぷちで何とか守っている体裁が崩壊していまいます。
ただまあ順番のことを抜きにしても爆発力には欠けるネタでした。多分富澤のコメントが一番的を射ていて、もう40歳の山名が好きな女子を意識するという設定が浮世離れしていてハマらないんだと思います。山名がチャラいキャラで世間に浸透している、とかなら別なんでしょうが。
9.錦鯉
ボケの長谷川さんは49歳だそうです。その年齢でこのネタみたいに動き主体のバカバカしいギャグをやると、普通は痛々しくて見ていられないものですが、不思議と見ていられました。多分、ずっとバカをやっている井出らっきょみたいな風貌だから許せるんだと思います。レーズンパンのギャグを何度もやるというような技も見せていたので、決してバカバカしいばかりではないんです。
[参考]「M-1グランプリ」全15回審査基準の変遷から考える
塙は「レーズンパン」の滑舌が悪かったと言っていましたが、確かにもうちょっとちゃんと聞こえた方がいいですね。スベらせる必要のあるギャグなのでちゃんと聞こえなくてもいいだろうという声もあるかもしれませんが、「そのスベるギャグを何度もやる」というボケが本当の聞かせ所なので「これはスベってもしょうがないな」とお客さんにきちんと思わせる必要があります。それには、何を言っているかを理解してもらう必要があります。ツッコミの渡辺さんは、声を張る時はいいのですが、それ以外の時は声がちょっと小さかったです。
10.ウエストランド
最後はツッコミの井口が南キャンの山ちゃんみたいに世の中への不満をぶちまけつつ偏見を大声で呼ばわる漫才になっていました。意識してパンチラインをいくつも入れ込んでいましたが、ちょっとそのキャラへの変貌が唐突過ぎます。冒頭でボケの河本が「不倫したい」とボケるのを制止しているので、まともな人に見えてしまうのです。井口のキャラクターが巷間に浸透しているわけでもない以上、ネタの最初から井口がそういうルサンチマンまみれのキャラだということをお客さんにフッておかないと、M-1の短いネタ時間ではウケきるところまで温まらないと思います。
井口の偏見まみれの言動に大してほとんどツッコミが入らないことも彼のキャラクターを分かりにくくしています。松本が「何漫才か最後まで分からなかった」と言っていたのもそういう意味だと思います。
井口のキャラを浸透させるための1発目のクダリは、井口が「かわいくて性格のいい子? いないよ」は3回立て続けに言うところなのですが、3回目で2回目よりウケが少なくなっていました。そのせいでやっぱり井口のキャラが分かりにくくなったと思います。3回目は、もっとたっぷり(2回目より)間をとって、動きも大きくした方がウケると思います(それでも無理なら2回で止めておくべきでしょう)。
「復讐だよ」という台詞も2回言っていましたが、2回目がウケていなかったので同じことが言えます。途中で河本が言った「ぷよぷよ」や「予習」のボケも漫才全体の流れとは関係がない(そのうえ前者は大してウケていなかった)ので、ない方がいいと思います。
それと河本は全体的にカミ気味でした。井口からツッコミが入るわけでもなかったので、良くないです。
<ファイナルステージ>
1.見取り図
1本目と違って去年みたいに2人でケンカをするしゃべくり漫才でした。やっぱり盛山の声質はガチのケンカに合っていません。1本目みたいに多少戸惑いながらツッコミを入れるキャラクターの方がハマります。
だから1本目よりはハネきらなかったですね。「カバー」や「マロハ島」みたいな伏線を入れていたのは良かったですが。
それと、2人が地元のディスり合いの時に出したライターと成人式のエピソードはおそらく完全な嘘なんですが、そのわりにつまらなかったです。嘘をつく からにはもっとウケ切って欲しいです。
2.マヂカルラブリー
1本目と同じ感じで野田が動きまくるネタでした。特に追加で言いたいことはないですけど、よくウケていました。
3.おいでやすこが
こちらも1本目と同じ感じでしたが、ウケは1本目より少なかった感じがします。個人的には、もう小田のツッコミに飽きてしまっていた感じがします。大声だけであんまりワードセンスとかがなかったからだと思います。
<総評>
最後に残った3組は確かにどこかが図抜けているということもなく、審査員の票は割れていました。見取り図とおいでやすこがは1本目より失速していたので、それはマヂカルラブリーにとっては幸運なことだったと思います。
野田のキャラは筋肉とバカなんですが、今後テレビで売れるにはキャラがかぶっている春日や庄司やきんに君といった強敵と伍していく必要があります。難しそうですが頑張ってください。村上の方は全くキャラが見えてきません。何か見つかるといいですね。
見取り図は・・・。何回もM-1の決勝に来てはいる以上、テレビでの使いどころがはっきりしているのならばもう売れているでしょうから、色々難しさはあるのでしょう。まあこれに懲りずにやってください。
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企画者の名ばかりが喧伝されてしまったのはドラマ『共演NG』(テレビ東京)にとって不幸なことであったのではないか、と全6話を見終わって思う。
懇意のドラマプロデューサーから、
「『共演NG』は業界人は先読みできて面白いと思います。ドラマ外野の人でなければ躊躇する企画。一般視聴者がどこまで面白がれるかは疑問」
とのメールが来たので、定額制動画配信サービスParaviでの後追い視聴で見た次第。
日本一小さな在京キー局・テレビ東洋(略称:テレ東)が社運を懸けて、大人の愛を描く大型恋愛ドラマ『殺したいほど愛してる』を制作する事になった。作品は大物実力派俳優の遠山英二(中井貴一)と大物人気女優の大園瞳(鈴木京香)が出演する大人の恋愛ドラマ『殺したいほど愛してる』。世間の話題は内容よりもこの2人が「共演NG」なことにある。2人は、25年前に共演した大ヒット恋愛ドラマ『愛より深く』で実際に恋愛関係へと発展したが、遠山の二股が発覚したことで破局。それ以来、公然の共演NGとなってしまっていたのだ。
仕掛けたのはNetflixなどで活躍するショーランナー(すべての実権を握る現場総責任者、アメリカのドラマ現場で生まれた職種である)の市原龍(斎藤工)。製作総指揮・脚本・広報の一切を仕掛けるいわば黒幕である。
さて、ここまでの設定があれば、コントなら後は役者の芝居で転がって行くと思われる、優れた設定である。だが、この設定は業界の黒い裏側にもふれるものであるし、触れなくては、軟弱なコメディになってしまうという危険をはらんでいる。面白さが危険に勝って、番組が成立することはないテレビ界である。だから、なりふり構わず、売り上げを上げたいテレビ東洋(テレ東)でなければ、この企画は着地しない、と大抵の業界人なら理解するだろう。テレビ東洋と、テレビ東京のアナロジーがこのドラマに真実味を与える。
では、なぜ、「『共演NG』=劇中劇としての『殺したいほど愛してる』」は、テレビ東京の連続ドラマとして成立したのか。その背景を推測してみたい。
製作著作は「共演NG製作委員会」であり、テレビ東京本体ではない。製作委員会とは、制作資金調達の際に、単独出資ではなく、複数の企業に出資してもらう方式のことである。通常この製作委員会には、テレビ局、広告代理店、製作会社、スポンサー、芸能プロダクション、商事会社などが名を連ねる。責任を分散するのはもちろんだが、収益も出資比率によって分配される。これまで番組と呼ばれていた物はコンテンツと名を変えてマネタイズされてきたので、この製作委員会方式は今後ますます増えるだろう。
通常、テレビ局で最も権限があるのは、番組の着地を決定し、予算配分を決める編成局である。しかし、『共演NG』での編成局の関与は着地を追認するなどの小さなものであろう。恐らく営業局が編成局の頭越しにまとめた企画である。ドラマ中でも編成局の人間は主要な登場人物にはならない。編成が強大過ぎると、製作現場の創作意欲を削ぐことになるが、弱すぎるのも、テレビ局の存在意義を問われることになる。
『共演NG』の演出を担当したのはCX系列のフジクリエイティブコーポレーション(FCC)である。演出家は大根仁氏、フリー。脚本は樋口卓治氏、バラエティ番組出身である。樋口氏は、バラエティ番組の裏側も熟知しているので、脚本にはその当たりのネタも描き込まれている。
芸能リポーターの横暴ぶりも描かれているが、今ここは業界と持ちつ持たれつなので、このような修羅場は起こりえないだろう。きちんと芸能を評論する力を持つ芸能ジャーナリズムというのは今はないと断言しておこう。
中井貴一と鈴木京香は措いておき、『共演NG』のなかですばらしい芝居をした人を2人挙げておく。
昭和から平成にかけて時代劇俳優として人気を博した出島徹太郎役を演じた里見浩太朗。コントで良くやる時代劇口調が抜けないで現代劇に出てしまった俳優を演じるが、ぎりぎりのところでコントになるのを止めているのはさすがである。
毒舌のアシスタントプロデューサー・楠木美和を小島藤子は得な役をもらった。ドラマ好きで情熱家で自分に正直で、という与えられた役をのびのびと演じていた。使いたくなる女優さんだ。
最後に、日本ではほぼ存在しないショーランナーを市原龍を演じる斎藤工。『共演NG』を成立させた目的は何か、それがサスペンス調で描かれるが、欲張りな物語である。
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マンザイは出来ないナインティナインが、とくに笑いをとることもなく淡々と進行をし、殿堂入りしてマンザイはもうやらないビートたけしが最高顧問としてコメントをする2020年の『THE MANZAI』が、23組のマンザイ師を集めて行われた。出場の23組は番組スタッフが、2020年12月時点で最もおもしろい、腕のある漫才師を集めましたと言うことだろう。
コンテストでチャンピオンを決めたり、色々迷いまくっていた番組の形式だが今年になって、ようやく純粋にネタの面白さを楽しめる、無駄を排除したとても見やすい番組になったように思う。10年後に「2020年のベストのマンザイ師は誰だったのか?」を調べるにも役に立つかもしれない。
出場メンバーを登場順にあげておこう。
<19時台>
【アンタッチャブル】山崎弘也(44歳)、柴田英嗣(45歳)。山崎の瞬発力はアドリブでこそ発揮されるのであって、作り込みしすぎはもったいないと思った。
【ミルクボーイ】内海崇(34歳)、駒場孝(34歳)。昨年のM-1で、優勝したネタのリターン漫才。駒場が振るオカンが忘れた名前とその特徴に対する、内海のツッコミ。飽きられる宿命を持ったネタだが、内海の偏見がエスカレートしていて面白い。
【かまいたち】山内健司(39歳)、濱家 隆一(37歳)。この2人はキングオブコント2017で優勝しているが、しゃべりがメインなので、マンザイに専念したほうがよいのではないか。マンザイでは破綻がない
【ナイツ】塙宣之(42歳)、土屋伸之(42歳)。土屋のツッコミが上手くなっていると、ビートたけしが褒めていた。それにしても、ビートたけしは数えるほどしか言葉を挟まない。感想が編集でまるまるカットされているところもあったのだろう。ナインティナインも特に振ることもない。
【パンクブーブー】佐藤哲夫(44歳)、黒瀬純(45歳)。筆者は佐藤の風貌がすきだ。この人はフラがあるので普通のことを喋ってもにんまり出来る。商談の設定のマンザイ。もし君が〇〇だとしたら・・・設定マンザイはネタがつくりやすいのだろう。8割がたが設定マンザイだった。
【銀シャリ】鰻和弘(37歳)、橋本直(40歳)。桃太郎異聞。
【ミキ】昴生(34歳)、亜生(32歳)。プレマスターズ(予選)を勝ち抜いての登場。面白い、二重丸だ。
【博多華丸・大吉】華丸(50歳)、大吉(49歳)。「この番組に出るのは(マンザイの)免許更新に来るようなもんだ」と、言っていた。スタッフはこの言葉を大切にすべきだ。マンザイ免許の更新、それが番組のコンセプトであるべきだと思う。
<20時台>
【サンドウィッチマン】伊達みきお(46歳)、富澤たけし(46歳)。風呂に入ったり、バスでくいもの屋を探したり忙しいのに、ネタ作りやネタ合わせをしているのには頭が下がる。そのあたりが好感度も高い理由だろう。筆者は、2人ともがたい(図体)がデカすぎるのがこのコンビの弱点だと思っている。扮装が似合わないのである。
【霜降り明星】せいや(28歳)、粗品(27歳)。ネタがサザエさん異聞だったのはなんにしても残念だ。粗品は司会も上手い。起用されるケースが増えてくるだろう。テレビを中心にという考えが彼らにはあまりないのではないか。
【テンダラー】白川悟実(50歳)、浜本広晃(46歳)。関西では向かうところ敵なし。その匂いが漂っては来るが、嫌いではない。ビートたけしはもうギャグでは笑わないが、やる方はそれを気にする必要はない。
【海原やすよ・ともこ】やすよ(45歳)、ともこ(49歳)。姉妹マンザイ。姉妹で群を抜くマンザイを見せたのはかつての海原千里・万里(千里は上沼恵美子)だが、吉本興業はこの2人を後継者として推そうとしているのだろう。何組かいる『THE MANZAI』6回全登場のひと組である。容姿をいじるマンザイでないのは大変好感が持てる。
【和牛】水田信二(40歳)、川西賢志郎(36歳)。安定感抜群。無冠の帝王で良いではないか。結局生き残るのは彼らだ。
【ウーマンラッシュアワー】村本大輔(40歳)、中川パラダイス(39歳)。ほぼ、村本ひとりしゃべりのスタンダップコメディ。村本はアメリカのスタンダップコメディアンを理想としているようで時事ネタの内容とキレは爆笑問題の太田と互角。後は好き嫌いだ。
【ブラックマヨネーズ】小杉竜一(47歳)、吉田敬(47歳)。5年ぶりのマンザイだそうだ、もったいない。楽しそうに漫才をやるところが彼らの真骨頂だ。ネタの切れもセンスも良い。
【タカアンドトシ】タカ(44歳)、トシ(44歳) 電車でおじいさんに席を譲るネタ。ありがちなネタだが、腕で持っていくことが出来るようになった2人。
<21時台>
【千鳥】大悟(40歳)、ノブ(40歳)。独特なフラを持つ、筆者も好きな2人。この2人は何もネタを持たず、突然舞台に出てもマンザイが出来るだろう。アドリブが見たい。
【NON STYLE】石田明(40歳)、井上裕介(40歳)。家事代行サービス。マンザイだからこそ出来るネタ。コントでは無理。
【おぎやはぎ】小木博明(49歳)、矢作兼(49歳)。テンション低いのがウリ。コンプライアンスネタ。好きな人はすごく好きだろう。
【笑い飯】西田幸治(46歳)、哲夫(45歳)。WボケWツッコミの発明者。今回もWボケWツッコミでのネタだったが、これはテンポがどんどん早くなるのが、見世物だと思うが、期待大だっただけに今ひとつだった。
【とろサーモン】久保田かずのぶ(41歳)、村田秀亮(41歳)。久保田は瀬戸わんやさんみたいだ。芝居が出来る。この人をコントに起用したい。
【中川家】剛(50歳)、礼二(48歳)。この位置に出る人を寄席の香盤では「膝替わり」と言い大変重要な役目だ。大トリのドッカーンを邪魔しないように、しかも笑いを鎮めないようにしなければならない。マンザイの実力で、今、中川家にかなう者はいないだろう。普通の雑談のように始まって、いつの間にかマンザイになっている。これが出来るのは中川家だけだ。しかも、途中で吹いてしまうのは、どちらかが予定にないくすぐりを入れたのだろう。それでも、マンザイとして絶対に破綻しない。ラジオの「宗教の時間」が抜群に面白い。お兄ちゃん剛のアドリブだ。
<大トリ>
【爆笑問題】太田光(55歳)、田中裕二(55歳)。ビートたけしは爆問に優しい。雰囲気が良く、客席もあったかくなる。「鬼滅の刃」。
『THE MANZAI』は芸人にだけ「進取の精神」があれば、いつまでも続く番組になるだろう。たけし賞は、「いい加減にやっているようだが面白い」受賞理由の中川家であった。「いい加減にやっているようだが面白い」これがマンザイだと筆者も思う。
所詮マンザイ、これが芸人の矜恃だ。
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「みなさんこんにちは、ガースーです」
番組冒頭、いきなりこんなボケをぶっ込んできたのは菅義偉内閣総理大臣。ビートたけしさんじゃあるまいに。12月11日午後3時、菅総理はインターネットの動画配信サイト「ニコニコ生放送」に出演しました。そこでこのボケです。総理大臣が不様にボケをぶっ込んだちょうどその時、テレビ各局は「東京新規感染者595人!過去2番目!」と特大テロップで伝えていました。
前日が東京初の600人越え、さし迫った医療崩壊が重大関心事となり、多くの人が毎日この時間に発表される数字を注目するその時に、笑いながらボケをかますという気の毒なほどのセンスのなさ。誰が考えてもボケてる場合じゃないでしょう。菅総理が、もしボケ時もわからぬほどボケているなら、これはホンマモンのボケ総理です。
それにしても、メディアを避けているように見える菅総理がなぜネット番組に出演したのでしょうか。就任早々に出演したNHKのツッコミがきつくひどくお怒りだったようですし、かつては「総理と語る」という番組を持ち回りで制作していた民放各局も総理の出演を望んでいるでしょうが、現状で出れば、コロナ、桜、学術会議、河井夫妻、元農相賄賂疑惑と、やはりキビシイ質問や評価が待っています。もはや菅総理が安心して出演できる場は地上波、BSにはなく、一国の総理が思いを語れる場はネット番組だけという状況のようです。では、このネット番組に出てコロナについて何を語ったのか・・・。
司会「GoToトラベルについてどうお考えか?」
菅総理「一時停止については、まだ考えていません。ステージ3の場所についてはしっかりした対応をとらなければいけない!時短などをお願いしている場所を継続していくのかを2~3日中に検証結果をもとに検討する。」
どこから生まれた自信なのか、GoTo を停止することはまったく考えていないようです。しっかり対応するのは「ステージ3の場所」だけのようですが、政府は今のところステージ3地方の存在を認めていません。少し前にステージ3指定を神奈川県の黒岩知事が西村担当相に申し出たところ、承服しがたい、と突っぱねられたと伝えられています。しかも菅総理の言葉どおりなら、対応するとしても「時短などをお願いしている場所を継続していくのか検討」するだけと受け取れます。
菅内閣はGoToだけはきわめて積極的ですが、GoToはコロナ禍の経済対策であっても感染症対策ではありません。GoToをやれば感染が減るなんて事はありませんから。
[参考]矛盾だらけ菅義偉内閣の終焉は近い
菅総理は逆に「GoToが感染を拡大するというエビデンスはない」と言ってGoTo 継続の根拠としています。「エビデンスがない」ということは、GoTo が感染拡大を助長しないというエビデンスもないということです。ようは「わからない」というのが合理的事実です。危険だというエビデンスがないけど、安全だというエビデンスもない飛行機にあなたは乗りますか?
常識的には開始以来5ヶ月も経って政府サイドがGoTo と感染の相関関係を示すデータを持っていないわけがないのですが、未だに「エビデンスがない」にすがっているのを見ると、菅総理にとっては不都合なデータなのかもしれないと疑ってしまいます。そう言えば菅総理はこんなことも言っています。
「以前、移動では感染は増えないと助言をいただいているんです。」
このコメントは現分科会長の尾身茂氏がどこかでおっしゃったと記憶しますが、言葉は続いていて「旅行先はしっかり感染対策をし、その上で旅行される方は感染しない、感染させないように充分に気をつけて欲しい。」といった趣旨のコメントだったと記憶します。
それにしても、一国の政策の安全根拠が、「エビデンスがない」、「以前に移動そのものでは感染は増えないと助言があった」、というだけでは科学的合理性がまったくありません。逆に、現在の分科会のメンバーが断言しています。
「県境をまたぐ移動と感染との関連は明らかに有為性がある。これははっきりと分科会に報告されている。」
菅総理の言葉で少々引っかかる言葉があります。「感染拡大を防ぐ」とは言うものの「感染を減らし無くす」とは言わないのです。屁理屈のようですが、単に「拡大を防ぐ」だけでは感染は増えないだけで減りません。GoToは日常の社会活動レベルに国が大金をぶち込んで膨らませた強制拡大活動です。これをやめたからと言って、世の中は元の社会活動レベルに戻るだけです。GoTo中止ではGoTo膨張分の感染拡大は防げるでしょうが、感染全体がどこまでも減少して行くわけではありません。
今は感染拡大防止策では足りません。根本的な感染防止策が必要なのです。経済対策は知恵を絞り、感染拡大を防ぎつつ必要で有効な手を打つべきです。一方で菅総理にはいま何ひとつない、根本的で具体的で、科学的合理性に基づいた感染撲滅政策こそが必要と考えます。
この非常時に、上記のような素人筆者の思いなどでこの稿を終えるわけにはゆきません。テレビで聴いたある医学者の言葉でこの稿を閉じることとします。
「コロナ対策の要諦は感染者を減らすこと、これに尽きます。感染者が増えても構わない、だけど医療は崩壊させない、経済は活発化させるという、そういうアクロバティックな方法は存在しないと思います。まずは感染者を減らすこと、これが経済を回す条件でもあるし、医療をひっ迫させない条件でもあります。その方法を我々はすでに知っているわけですから、あとはやるか、やらないかです。」
やるか、やらないか、ですよ菅総理。つまらぬボケですべっている場合じゃありません。今日12月12日、東京都の新規感染者発表数は過去最大を更新し、621人です。
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